日本ではたくさんの種類の缶酎ハイが売られていますよね。
お仕事が終わって帰宅後のホッとする時、缶酎ハイのプルタブをプシュッとする瞬間は至福のときでもあります。
でもその缶酎ハイの中でも「ストロングゼロは体に悪い!」といろいろなところで話題になっています。
お酒好きの方なら一度はこの話題を聞いた事があるのではないでしょうか?
もはや定説になりつつあるこのストロング系の缶酎ハイの話題について、現役のバーテンダー目線で解説してみたいと思います。
世間でストロングゼロが体に悪いと言われる理由
缶酎ハイの売り上げの多くを占めるほど人気があったストロング系缶酎ハイが、なぜこんなに体に悪いと言われるようになったなのでしょうか?
- 人工甘味料が使われている
- 香料が使われている
- アルコール度数が高い
「ストロングゼロは体に悪い」と言われる巷でよく聞く主な原因はこの3つになります。
さてこの3つ、世間で言われるほどの体への影響が本当にあるのでしょうか?
缶酎ハイに使われる人工甘味料の代表としてよく言われるのが、スクラロースやアセスルファムK。
カロリー無しで甘みを感じられるものが原料に使われているのは、カロリーの取りすぎは体に良くないという世間の考えに対してのマーケティングの一つなのでしょう。
(そもそもこのカロリーという概念も論議のさなかにあります)
これらの甘味料が食品添加物として使われている事を、「ストロングゼロは体に悪い」という事の理由に思っている方もいますが、これは間違いです。
ストロングゼロ以外の缶酎ハイはもちろん、ほかにも清涼飲料水や、様々な食品にこれらの人工甘味料は使われています。
ストロングゼロだけに限られた事ではありません。
※アルコール分解には糖が必要で、人工甘味料には必要な糖質がないから酔いやすいという説もありますが確かなエビデンスはありません。
二つ目の理由になっている香料も、様々な飲料や食品に使われています。
私たちは普段から香料の入った飲料や食料品を摂取していて、これらのものを完全に避けて生活するのはなかなか難しいですよね。
これもストロングゼロに限った話ではないので、これも間違いです。
※食品添加物に関しては後ほど解説します
ストロングゼロの人気の理由である「缶酎ハイで9%のアルコール度数」。
この「9%」が無視できないポイントになります。
9%のアルコール度数の飲み物を、平均5%ほどのビールなどと同じようにグビグビと飲んでしまっては、非常に酔いやすいことは明白です。
ストロングゼロ500mlでテキーラショット3〜4杯分のアルコール摂取と同じだと世間でよく言われていますが、単純にこの通りとはいかないまでもストロングゼロの味のイメージよりは摂取アルコールが多い事は確かです。
例えば、ベルギーの有名なビールでシメイというビールがあるのですが、ブルーラベルのものはアルコール度数が9%になります。
ストロングゼロと同じアルコール度数です。
これは自身が経営するBARで何度か実際にあったことですが、
このアルコール度数9%のシメイを飲んで、いつも以上に酔われる方が大勢います。
特に早いスピードで2本続けて飲まれた方の何人かは、つらい酔い方になってしまう事も。
それもあって、シメイをお店で提供する際には必ずアルコール度数や飲み方など詳しく説明するようにしています。
シメイは色々な種類があってとても美味しいビールなのですが、一般的なビールよりもアルコール度数が高めなので、飲む量とスピードを考えて飲む方が綺麗にお酒を楽しむ事ができます。
これと同じように、一般的な缶酎ハイのアルコール度数が4%〜7%に対して、ストロングゼロは9%。
たかだか数%しかアルコール度数は変わりませんが、その数%の違いを意識せず普段飲んでいるお酒と同じようなスピードで飲んでしまうと、体への影響は思った以上に大きなものになります。
日本と世界の食品添加物の単純比較はできない
次に食品添加物のお話。
日本が許可している食品添加物の種類が、実は海外よりも多いという話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
日本では認可が下りている食品添加物が、海外では使用を禁止されているといったこともあります。
日本の使用している食品添加物の種類が「海外の何倍!」と言われたりもしていますよね。
食品を綺麗に発色させたり、安定した状態で長く食品を保つなど、美味しそうに見える食品や長期保存といった利便性を求めた結果であり、購買意欲を促すための開発でもあったのでしょう。
確かに、日本の食への安心安全感は昔言われていた程高いわけではないのは事実です。
しかしここで注意して欲しいのは、単純に食品添加物の種類の数字だけを海外と比べてはいけないという事です。
そもそも国によって食品添加物のカテゴリー分けや定義が異なっているので、一言で食品添加物と言ってもどのように分けた時のデータかを考える必要があります。
欧州など他の先進国に比べると、日本が使用している食品添加物の種類は多いですが、「日本の何百種類に対して海外は何十種類」と単純比較するものではないのです。
日本はお酒に対する基準が甘い国
お酒に対する考え方が、海外と日本では大きく異なります。
日本では「お酒」と言えば成人すれば誰でも多少は嗜むもの、あるいは毎日の晩酌のように非常に身近で誰でもどこでも楽しめるもの、というライトな感覚で付き合っているものですよね。
しかし、海外では少し様子が違います。
精神疾患や家庭内の暴力、アルコール依存による様々な諸問題に対しての認識が日本よりも厳しく、アルコールをドラッグとし捉えている国が多くあります。
アメリカでは「公共の場所でお酒を飲み歩く事は禁止」といった事もよく知られていますよね。
また家以外の場所や人前で、酔っ払った姿を見せる事自体が良いことではないと言う感覚の国もあります。
日本は飲酒や酔っ払いに対しての許容がかなり高い国で、世界の中でもアルコールへの感覚が少し特殊な国です。
日本に行けば格安ですぐに酔えるお酒がコンビニエンスストアで買えて、しかも道端でも公園でも気にせず飲酒ができてしまう。
海外から日本の缶酎ハイをわざわざ飲みに来る観光客もいるという現象が起きる理由も納得なのではないでしょうか。
アルコールとの付き合い方が重要
ストロングゼロに使用されている香料や人工甘味料などは他の缶酎ハイに使用されているものと共通のものが多く、特にストロングゼロに限った話ではありません。
また缶酎ハイに使用されている香料、人工甘味料といった食品添加物もお酒だけに使われているわけではなく、私たちが日々口にする様々なものに使用されています。
食品添加物の種類によっては肝臓に負担がかかるため、酔い方に多少の影響はあるかと思いますが、やはりそれだけで香料や人口甘味料だけを酔いやすい原因にする事は少々無理があります。
ストロングゼロが酔いやすい理由はアルコール度数が高く、そのアルコール度数の割に非常に飲みやすい味に調節されているからです。
缶酎ハイ独特ではあるとはいえ、この味の調節には相当な企業努力が伺えます。
この努力の結果、実際のアルコール度数を感じない飲みやすい味の缶酎ハイが出来上がり、さらにその飲みやすさのために短時間でアルコールを大量に摂取してしまうという構図が出来上がってしまいました。
結局アルコールの体への影響を考えながらお酒を飲むという事は、ビールやウイスキー、カクテルなど他のお酒でも同じ事です。
自分の体の変化を意識して綺麗にお酒と付き合う事が大切です。
最後に、アルコール度数が高めの缶酎ハイを悪酔いせずに楽しむ方法をいくつかご紹介しますね。
グラスに氷を入れて飲む事で、一口で口に入る液体の量を少し減らす事ができます。
氷が口元で邪魔をするので、がぶ飲みするよりは一回で口に入る液体の量が少なめになります。
また、氷が溶ける事で缶酎ハイのアルコール度数も下がってきます。
缶酎ハイは手軽にそのまま飲める事がメリットではありますが、グラスに氷を入れて注ぐという一手間で、短時間での大量のアルコール摂取を防ぐ事ができます。
氷を入れる事は、時間をかけてお酒を飲むいい方法です。


買ってはいけない缶酎ハイまとめ
ストロングゼロの体への影響を様々な目線で解説してきましたがどうだったでしょうか?
ストロングゼロだけを悪者にする必要がない事がお分かりいただけかと思います。
使用されている成分やアルコールの分解の仕組みなど、いろいろな知識がある事でより一層たくさんの種類のお酒を楽しむ事ができます。
お酒は本当に奥が深く素敵なものです。
お酒を扱う仕事に携わる身として、この素敵なものを人生の中で長く綺麗に楽しんでいただけたらと感じています!